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北越堂 本間七蔵

北越堂 本間七蔵

北越堂 本間七蔵

銀燗瓶(菊図) 本間七蔵

北越堂 本間七蔵 解説

北越堂は初代七蔵以来、安物を作ってきたというのが定説になっていて、板巻物の技術を燕の銅器にとりいれた功績については、何故か忘れられている。僅かに、玉川正作の「玉川堂と燕銅器の話」のなかで、

「この板金を巻いてロウ付けする方法は、国上村中島に八代も続いた銅器屋で牧島蔵という京都で修行して来た人があり、その製品を見習って明治20年頃、本間七蔵氏が初めたものと言われ、私共青年時代はそれを信じて居た。燕製品本来の特色に反する故か、全然普及せず本間氏が昔は稀に注文のあった1斗入水注等打上げに困難な大物を作った程度に終ったと言う。」
と、一応とりあげながら、
「だが、今考えるとこの説は聊か疑問である。玉川堂で輸出した品で、今残っている物にロウ付の痕跡が見えるものがあり、関口氏が京都遊歴の際、既に覚えて来ていたのであろうから昔から伝っていた技法だが、前記燕製品の特色に反するので用いられなかったものと思う。」
と否定的見解を述べている。

関口虎吉は、明治17年(1884)年季明、その後5年ほど京都を主に各地に修行し、明治22年(1889)に玉川堂工場長となり、輸出品を手がけることになるが、初代七蔵が板巻物に先鞭をつけた明治20年の頃は、関口虎吉がまだ京都遊歴中である。したがって、玉川堂が輸出品を手がける数年前にさかのぼる。
本間七蔵が板巻物に先鞭をつけたとする説に聊か疑問あるとした玉川正作の説は、思い違いであろう。
ついでにふれると「板金を巻いてロウ付をする方法」とあるが、明治20年に初代七蔵がとりいれた板巻物の技術は、板金をロウ付したのではなく、丁銅を板状に打ちならしたものを、ツメ出しをしてロウ付をしたものである。

「燕製品の特色に反するが故に全然普及しなかった」とある燕製品の特色とは、銅の打ち出しの技法を意味するが、当時としては量産につながる板巻物を手がけたことで、初代七蔵は同業者の集中攻撃をうけるが、それに屈することなく、一貫して板巻物を作った。銅器職人の間では、板巻物の技術は、当時としては革命的な技術革新の一面をもっていたことがうかがえる。

第一次世界大戦後の好況で、打出しものでは注文に応じきれなくなると、かつて、本間七蔵の板巻物を攻撃した同業の職人たちは、一斉に、伸銅板を巻いてロウ付をした安物を大量に市場に流した。銅器鍛冶百軒といわれた全盛時代をさきどりした初代七蔵は、職人としてよりも、事業家の素質をもっていたのかもしれない。

一例をあげると、長岡に風呂屋の売り物があって、それを買いとって、副業に風呂屋の経営にのりだし、自ら番台にも上ったという。推測すると七蔵の四十代の頃である。投資癖があり、米相場で二度も財産をすった、という語り伝えもある。板巻物が当ったからに違いない。職人も常時12~13人いたから生産力もあった。

18才の妻サダが、呉服の商いをしたいというと、即座に柏崎から古衣を買ってきてあたえ、古衣商いから現在の本間呉服店にまで発展させたのも、初代七蔵の事業欲の一端を示すものだ。

万延元年(1860)5月10日生まれ。明治2年(1869)玉川堂入門。明治12年(1879)年季明後、同じ玉川堂門下の実兄、本間與作のもとで働き、明治17年(1884)独立。 後、北越堂と称した、と玉川堂「門人名簿」にある。

二代七蔵は初代の妻サダの実家である宮島の家から7才で養子となるが、戸籍の上では明治26年(1893)入籍。初代のもとで修行。初代没後七蔵を襲名。明治16年(1883)10月30日生。本名宮島寅市。昭和59年2月3日没。101才の長寿を全うするが、死の直前まで職人として、仕事場からはなれることがなかった、という。

北越堂三代、本間市蔵は、大正2年(1915)12月31日生。七蔵を襲名しないまま昭和50年没。四代を継ぐべき長男稔は呉服店を継ぐが、早逝。分家として器物に転じた次男の弘が、祖父の健在のうちに銅器に復し、現在に至る。

大正四年、平田勇吉の依頼により、洋食器の手作り見本を完成した職人として、二代七蔵の名は、燕産業史に記されていることも北越堂の略歴に書き加えたい一項である。 (相沢直人/燕産業史料保存会)

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