所信表明(2025年第4回燕市議会定例会)
2025年12月12日に開会した第4回燕市議会定例会において、佐野大輔市長が所信表明を行いました。ここでは、その全文を掲載します。
2025年12月12日
第4回燕市議会定例会
所信表明
燕市長 佐野 大輔
はじめに
令和7年第4回燕市議会定例会の開会にあたり、所信を述べる機会を賜り、心よりお礼申し上げます。
このたび、合併後の燕市の第3代市長を拝命いたしました佐野大輔でございます。
これまで、私が目指す市政につきましては、選挙運動や私自身のSNSなどにおいて皆さまにお伝えしてまいりましたが、本日はこの議場において、改めて今後の市政運営方針、そして私が描く未来の燕市について述べさせていただきます。
決意
まずは、このたびの市長就任にあたり、市民の皆さまから寄せられた信託の重責を真摯に受け止めております。同時に、燕市のさらなる発展に寄与できる機会を得たことに、深い喜びと使命感を感じている次第であります。
これからの4年間、私がこれまで学校現場での教育活動や、文部科学省への派遣期間を含む市職員としての行政経験、民間企業勤務での実務経験、自ら立ち上げた事業活動、そして、短い期間ではございますが市議会議員として積み重ねてまいりました経験を礎として、燕市民7万5千人の代表として、市民一人ひとりの声を大切にし、課題解決に全力で取り組む覚悟であります。時には市民の皆さまの先頭に立ち、また時に後ろ盾となりながら、市民の皆さまと力を合わせて未来への道筋を切り開いてまいります。
現状認識
さて、現在の燕市、そして未来の燕市について、皆さまはいかがお考えでしょうか。
燕市は、鈴木前市長のもと、全国に先駆けて3つの人口戦略に積極的に取り組んできた結果、新潟県内の20市中、人口減少率は少ない方から2番目を維持しております。しかしその一方で、出生数は、最新値で年間387人にまで減少しており、人口減少が進む大きな要因となっています。
出生数の減少を抑制し、人口の減り幅をできるだけ緩やかにしていくことは極めて重要ではありますが、人口減少が避けられない現実を前提として、いかに本市の課題に適切に対応し、持続可能なまちづくりを進めていくのかということが、今後の市政運営において、さらに重要になってくるものと私は考えています。
燕市を支える産業界に目を向けますと、市内の事業所では、コロナ禍からの回復基調が一部には見られるものの、発注数の減少や物価高騰、人件費の上昇、そして労働力不足に伴い問題となる後継者不足や事業承継などに対応する必要があり、製造業を取り巻く環境は、依然厳しい状況にあります。
農業においても、生産コストの増加、地球温暖化による高温障害、従事者の高齢化に伴う担い手不足といった課題に加え、安定しない米価の影響を受け、農業経営は厳しい環境に置かれています。
また、教育に目を向けますと、近年、発達障がいへの認知が進んできたという背景もありますが、特別な配慮や支援を必要とする子どもたちが増加傾向にあります。
みんなでつくる燕市
これらの課題に向き合い、厳しい現状を乗り越えるためには、市民・企業・行政がそれぞれの強みを活かして互いに補完し合う仕組みが必要であると、私は考えています。行政は、民間の知恵や経験を活用するとともに、民間の方々が動きやすい環境を整備する。また、これまで先輩方の世代が支えてきたまちづくりに、私と同世代の皆さま、そしてその次の世代も巻き込んで、まちづくりの目標を皆で共有し、その目標に向かって力を合わせ取り組んでいく。それが、私が描く『みんなでつくる燕市』であります。
この理念のもと、私は目指すべき方向性として、次の3つを掲げます。
稼ぐ燕市・育てる燕市・燕はひとつ
1 稼ぐ燕市
1つ目は、『稼ぐ燕市』であります。
市民の皆さまの生活が豊かになるためには、安定した収入を確保できるかが重要です。製造業や農業などの産業振興に真摯に取り組み、その成果を市民全体が享受できる『豊かな暮らし』に繋げていく。その想いから、『稼ぐ燕市』の実現を目指して取り組んでまいります。
(1)製造業
まず、『製造業』における政策の柱として、次の3つを掲げます。
● 新たな産業の創出
1つ目の柱は、【新たな産業の創出】であります。
燕市が積み上げてきた技術を活かして、成長が期待できる事業領域への参入など、民間の方々が主導する新たな産業の発掘を行政が支える、民間主導型の新産業の創出に取り組みます。
また、県内外からの企業誘致を積極的に進めることで、新たな産業がもたらされるとともに、産地として発展し、『ものづくりのまち燕』のブランドの強化にも繋がると考えています。その際、産業用地としての土地活用についても検討してまいります。
● 販路拡大
2つ目の柱は、【販路拡大】であります。
燕市が誇るさまざまな製品は、国内における人口減少に伴い、需要が縮小していくことは避けられません。一方で、世界に目を向けますと、私の学生時代には世界人口が60億人と言われておりましたが、現在ではその数は80億人を超え、なおも増加の一途をたどっております。
だからこそ、国内市場だけに留まらず、海外市場へ販路を見出していくことは、『ものづくりのまち燕』をさらに発展させるうえで重要となってきます。
そのため、これまで培ってきた燕市の高い技術力を土台に、世界基準のものづくりを進化させる取り組みを支援し、海外市場への販路拡大や受注増加を目指し取り組んでまいります。
● 働きやすい職場づくり
3つ目の柱は、【働きやすい職場づくり】であります。
「燕はものづくりがすごい」と学校で学んだとしても、ものづくりに携わる大人たちが、その仕事に誇りとやりがいを持っていなければ、子どもたちが「自分もものづくりをやってみたい」という想いを抱くことは難しいでしょう。そのため、ものづくりの現場で働く方々が、誇りとやりがいを持って働ける環境をソフト・ハード両面で整備することが重要であると考えています。
加えて、ものづくりのスタートアップを支援する仕組みづくりや、担い手が減少する中でも、多様な技術に対応できる人材育成を支援するなど、ものづくりの基盤を維持・発展させる仕組みづくりを進めてまいります。
(2)農業
次に、『農業』における政策の柱として、次の2つを掲げます。
● 担い手の確保
1つ目の柱は、【担い手の確保】であります。
燕市の農業を支える農家の皆さまは、おおよそ70代以上の方が中心となっており、今後5年、10年の間に人手不足が深刻化する懸念があります。農地の集積に向けた基盤整備も重要ではありますが、実際に働く担い手がいなければ農業は成り立ちません。
そこで、農業の新たな担い手を確保するため、農業を始めたいと考えている方々が、農業に一歩を踏み出す段階から経営を軌道に乗せるまでを一貫して支援する仕組みを構築してまいります。また、現役農家の方々が、安定的に経営を継続できるよう、さらなる支援にも取り組んでまいります。
● 高収益化の実現
2つ目の柱は、【高収益化の実現】であります。
これまでも、農家の皆さまが直販を通じて所得向上を目指す取り組みを支援してきましたが、今後も利益を確保し、安定した経営へと繋げるための支援を強化するなど、『稼げる農業』を推し進め、子どもたちが「農業をしたい」と希望を抱ける燕市を築いてまいります。
(3)商業・観光
以上のように、燕市の基幹産業である製造業や農業が活性化することで、商業やサービス業、観光などへも活力がもたらされるものと捉えており、この好循環の中で、商業、サービス業、観光にも力を注いでまいります。
商業分野では、工業製品や農産物の流通を担う卸・物流業の活性化に取り組むとともに、商業地域やにぎわい交流拠点などにおいて、にぎわいを創出し、さらには商店街の活性化や回遊性の向上、イメージアップに引き続き取り組んでまいります。
観光では、産業史料館や『燕三条 工場の祭典』を核としたインバウンド向け施策を強化するとともに、観光協会による旅行プランの造成を進めるなど、民間の方々と一体となって誘客促進を図ります。
また、弥彦や寺泊といった観光地に隣接する燕市の強みを活かし、『道の駅SORAIRO国上』を拠点に、移転予定の新分水良寛史料館なども含めた国上地域が観光の目玉となるよう取り組んでまいります。
2 育てる燕市
2つ目の目指すべき方向性は、『育てる燕市』であります。
ものづくりも、まちづくりも、その根幹にあるのは『人』であります。市政運営において、人を育てることこそが、燕市の持続的な成長の基盤であると、私は確信しています。だからこそ、鈴木前市長が信念をもって取り組み、高い評価を得た『人づくり』の精神をしっかりと受け継いでまいります。
そして、燕市は、令和7年11月25日に『こどもまんなか応援サポーター』を宣言いたしました。この宣言を契機に、子育て環境のさらなる充実を図るとともに、『こどもまんなか応援サポーター』としての取り組みを通じて、未来を担う子どもたち一人ひとりの個性と可能性を尊重し、それを最大限に伸ばせる市政を実現してまいります。
その政策の柱として、次の2つを掲げます。
(1)子育て支援のさらなる拡充
1つ目は、【子育て支援のさらなる拡充】であります。
燕市は、これまで『子育てするなら燕市で』を旗印とした先進的な子育て支援に力を注ぎ、今年の夏には『うさぎもちハレラテつばめ』を完成させるなど、さまざまな政策を展開してきました。
その一方で、近年、他の自治体も充実した支援メニューを打ち出す中、燕市としても子育て施策のさらなる充実を目指す必要があります。人口減少が進む中で生まれてくる子どもたちを、そしてその子どもたちを育てる保護者の皆さまを支える子育て支援策を一層拡充してまいります。
(2)障がいのある子どもたちへの支援の拡充
2つ目の柱は、【障がいのある子どもたちへの支援の拡充】であります。
私は、「いわゆる『障がい』は、その人にあるのではなく、社会の側にある」という考えのもと、障がいのある方にとって住みやすい街は、すべての人にとって住みやすい街になると常々考えてきました。
燕市は今年度から5歳児健診を開始し、特別な支援や配慮を必要とする子どもの早期発見・早期療育に取り組んでいます。この施策をさらに充実させるため、専門的な資格をもつ人材を活用し、自立支援を一層強化してまいります。
また、医療的ケア児や重症心身障がい児が、地域の中で健やかに育つことができる環境整備を進め、保護者の負担軽減を図るとともに、子どもたちが生き生きと成長できる社会の実現を目指してまいります。
以上、『育てる燕市』における2つの政策の柱に加え、 『Jack & Betty プロジェクト』や『長善館学習塾』、『羽ばたけつばくろ応援事業』など、子どもたち一人ひとりの個性を尊重し、世界や地域で活躍できる人材の育成に力を入れてまいります。
さらに、不登校の子どもたちへの支援体制を強化するとともに、部活動の地域展開を着実に進めるべく関係機関との連携を強化し、すべての子どもたちが安心して未来の夢を描ける環境づくりを進めてまいります。
3 燕はひとつ
3つ目の目指すべき方向性は、『燕はひとつ』であります。
燕市は、間もなく合併20周年を迎えます。これまでの『燕』『吉田』『分水』の3地区をひとつにする歩みから、今後は、行政や民間の垣根を越えて、さらには、子どもたち、現役世代、先輩世代といった世代を越えて協力し合う。これが、私が目指す『燕はひとつ』であります。
この『燕はひとつ』の実現に向け、市民の皆さまに市政をより身近なものとして感じていただけるよう、私自身が市政について直接お伝えする場を増やしてまいります。また、先輩世代が築いてきたまちづくりの実績を私たち世代が受け継ぎ、参画する仕組みを構築するとともに、新たな官民一体の取り組みも進めてまいります。
また、市民の皆さまにとって最も身近なまちづくりの場として、自治会やまちづくり協議会などの活動があります。一つひとつの自治会やまちづくり協議会が活性化することは、地域全体の結束を強めるとともに、結果的に燕市全体の活性化へと繋がる重要な要素です。こうした地域の活性化により未来を担う子どもたちが、「燕市に戻りたい」、「地域で暮らしたい」と思うきっかけとなるよう、各団体への活動支援をさらに充実させてまいります。
さらに、行政の役割として重要なのは、市民の皆さまと真摯に向き合い、政策の企画・立案・運営を行うことです。かつての映画の中で、「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」という名台詞がありました。市政の課題や市民ニーズは『庁舎内』ではなく、『地域の現場』にこそ存在しています。そのため、地域の皆さまのご協力をいただきながら職員を育てるといった、地域に根ざした職員の育成に力を注いでまいります。
行財政改革等
以上、『みんなでつくる燕市』を旗印に、『稼ぐ燕市』『育てる燕市』『燕はひとつ』という3つの目指すべき方向性を掲げ、市政を進めてまいりますが、そのためには、人口減少を見据えた行財政の見直しも不可欠であると考えています。
人口減少が進む中、市民サービスの質を低下させずに持続可能な燕市を実現するためには、継続的な行財政改革が必要です。具体的には、下水道使用料の改定を着実に進めていくほか、公共施設の統廃合・集約化にも引き続き取り組みます。また、公共施設の管理運営には民間ノウハウの活用や広域連携も視野に入れ、建物系公共施設保有量適正化計画を見直してまいります。
令和6年度に55億円以上ものご寄附をいただいた『ふるさと燕応援寄附金』については、ご好評をいただいている金属加工製品に加えて、農産物や飲食品を返礼品として充実させ、多くの方に繰り返しご寄附いただけるよう取り組んでまいります。
積立基金については、これまでの定期預金に国債等の債券を組み合わせて、より効果的な運用を進めてまいります。
以上のような政策以外にも、市民の安全・安心を守りながら持続可能な燕市を目指して、日々の暮らしを支える公共交通の利便性向上や道路などのインフラ整備に努めてまいります。また、県立吉田病院や県央基幹病院、市内医療機関との連携を深め、高齢者などが安心して生活できる医療・福祉の充実に力を注ぐとともに、健康寿命の延伸や認知症対策にも重点を置き、医療機関や介護施設、行政が一体となった地域医療体制を強化してまいります。
さらに、災害に強いまちづくりを目指し、大規模地震や多発する豪雨などを想定した防災・減災対策を進めてまいります。自助・共助・公助の連携を基盤に、備蓄品の充実に努めるとともに、高齢者や障がい者など、災害弱者の避難支援体制を強化してまいります。
スポーツにおいては、先に触れました部活動の地域展開を進め、関係団体との連携を強化するほか、市民の皆さまがトップアスリートの技術を身近に感じ、スポーツを楽しめる環境の整備にも努めてまいります。
文化振興では、地域の芸能文化を次世代へ継承する仕組みづくりを進めるとともに、スポーツ同様、部活動の地域展開における指導者の確保や団体との連携強化にも力を注ぎます。
このような政策を推進するにあたり、国や県、他自治体との連携強化を図るとともに、先進的な取り組みを学びながら、燕市独自の政策立案へと発展させていくことが重要であると考えています。市民サービスのさらなる向上を目指すと同時に、業務を効率化し、政策立案に集中できる環境を整備するためにも、AIの活用などDXを一層推進してまいります。
結び
以上、今後の市政運営につきまして、所信を述べさせていただきました。
これまで先輩方が築いてこられた成果と想いをしっかりと受け継ぎ、そして市民一人ひとりの夢や希望を形にしながら、持続可能で豊かな燕市をつくってまいります。未来を担う子どもたちへ確実にバトンを手渡せるよう、50年、さらには100年先へ繋がる道筋を見据え、全身全霊をかけて市政に取り組んでまいります。
ぜひ市民の皆さま、そして、議会の皆さま、共に手を携え、魅力ある燕市をつくってまいりましょう。なにとぞ皆さま方のご指導とご支援を切にお願い申し上げ、私の所信表明の結びといたします。
- この記事に関するお問い合わせ先
-
企画財政部 企画財政課 企画チーム
〒959-0295
新潟県燕市吉田西太田1934番地
電話番号:0256-77-8352
更新日:2025年12月12日